「アニサキス」にご用心!

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刺身「アニサキス」という寄生虫をご存知ですか?

「夕食に活きのいいシメサバを食べたら、
 夜中から急にお腹が痛くなって救急車を呼んだ」
「みんなで寿司屋に行ったら、夜遅くに、
 ゲーゲー吐いて腹痛がひどく朝まで苦しんだ」

 こんな経験はないでしょうか?
 これは胃の中に、アニサキスが突き刺さって起きる
 激しい「急性胃炎」のためかもしれません。

 私たちのクリニックでも、この三ヶ月の間に、
 三人の「胃アニサキス症」の方を治療しました。
 参考までに、ご紹介いたします。

・当クリニックで治療した「アニサキス症」

(1)36歳の男性

 海釣りでサバを釣り上げ、シメサバにして食べた。
 夜中の2時から激しい胃痛と嘔吐をくり返した。
 会社で紹介されて受診。そのまま内視鏡を施行。

 胃の真ん中(胃角部大弯)に、2センチ長のアニサキス。
 粘膜に頭を突っ込んだ部分は、黒い出血と発赤あり。
 生検鉗子(かんし)を用いて頭部の粘膜ごと除去。 (写真1)

写真1

写真1

(2)65歳の男性

 会社の部下たちと、寿司屋で飲み食いした。
 夜中から腹痛と吐き気あり。朝ひどくなった。
 近くの医院から紹介され、緊急内視鏡を実施。

 胃の奥の方(前庭部大弯)に、15ミリ長のアニサキス。
 頭の刺入部には少量の黒い出血あり。
 鉗子で頭部から除去した。 (写真2)

写真2

写真2

(写真2)

(3)40歳、男性

 朝食にサシミを食べた。10時頃から強い胃の痛み。
 近くの医者で「アニサキス?」と言われて受診。
 ただちに、胃の内視鏡検査を行った。

 胃の上の方(胃体上部大弯)に17ミリのアニサキス虫体。
 刺入部の周りは強い発赤とひだの腫脹あり。
 生検鉗子で頭部近くの粘膜ごと摘除した。 (写真3)

写真3

写真3


 いかがでしょうか?

「そういえば、前にそんなことがあったけれど、
 2週間後の胃の検査では、問題ないと言われたなあ」
 という方もいらっしゃると思います。
 その理由についてご説明しましょう。

・診断と治療のポイント

「アニサキス」の診断と治療には、三つのポイントがあります。

(1)生の魚を食べて数時間後の「吐き気」や「腹痛」
 上記の例でも分かるように、「シメサバ」「スシ」「サシミ」を
 食べてから数時間後の、強い「嘔吐」「腹痛」が特徴です。

(2)「緊急の内視鏡」が役に立ちます!
 アニサキスは、人の胃の中では3日くらいしか生きられません。
 1-2週間あとで内視鏡検査を受けても「異常なし」なのです。
 痛みが強い時、すぐに「緊急内視鏡」を受ければ診断がつきます。

(3)治療は「アニサキス」を取り除くこと。
 内視鏡で、アニサキスをきれいに取り除いてしまえば、
 痛みや吐き気は、すみやかに治まってくるのが普通です。
 上記の方たちも、1-2時間で症状がほとんど治まりました。

・すぐに「内視鏡」を受けましょう

 アニサキスは日本近海160種類くらいの魚で見られます。
 問題になる幼虫は、魚の腸の中でしか生きられません。

 釣り上げた活きの良い魚をシメたり、さばいたりする時に、
 魚の筋肉(人が食べる部分)に逃げ込むことがあるのです。

「アニサキスが胃に咬みついているので、あんなに痛いの?」
 と尋ねる人がいますが、そうではありません。

「アニサキス症」は、胃の粘膜のアレルギー反応。
 急激に起きた、「胃のじんましん」のようなものです。

 だから、最初に食べた時は、まったく痛みや吐き気はなく、
 二度目に「また来た!」という過敏反応が起きているのです。

 内視鏡検査では、細長い、白いアニサキス幼虫を見逃さない
 ことが大切。食べ物のかすと区別がつきにくいことがあります。

 アニサキスを除去するときは、尻尾を引っ張っるのは「×」。
 頭の部分が胃に残ると、アレルギー反応が改善しません。

 必ず、突き刺さっている頭を、まわりの粘膜ごと、きちんと
 ていねいに取り除くことが重要なのです。

「緊急の内視鏡検査ができる施設にすぐ行くこと」
「アニサキスの内視鏡除去は、きちんとていねいに」
ということが、とても大切なわけですね。

・お寿司やサシミを美味しく食べるために

 アニサキス症に絶対ならない方法というのはありません。
 ただ、活きのいいお魚を食べる時の心がけはいくつかあります。

 まずは「プロの料理人」の包丁さばきの方が「安全」です。
 自分でサバをシメるのは楽しいけれど、危険もともないます。

 一番安全なのは、「煮る」「焼く」「冷凍する」なのですが、
 せっかくの「おいしさ」がそこなわれるのは残念ですね。

 あとは「よく噛んで食べること」。効果はあると言います。

 それでもお腹が痛くなった方は、ただちに内視鏡を!
当院でよければ、すぐにご連絡ください。

<アニサキスにまつわるエピソード>

・以前、俳優の森繁久弥さんが「アニサキスによる腸閉塞」で
 手術を受けて話題になりました。胃から小腸に流れていった
 アニサキスが、腸の壁で反応を起こしてしまったのでしょう。

・アニサキスが胃がんの周りに集まるという現象が最近になって
 発見されました。アニサキスに似た「線虫」を用いて、尿検査で
 がんを発見するという研究が進んでいます。興味深い話ですね。

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