ピロリ菌の検査が突然「陽性」に!どうして?

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■ピロリ菌の相談が急に増えたのは?

最近、数名の方から、健診結果についてご相談を受けました。

「昨年までピロリ菌の検査はずっと陰性(-)で『異常なし』でした。
ところが今年の検査で突然「陽性(+)」といわれ、『要治療』の判定になりました。どうしてでしょう?」
という内容です。

今年に入って、このような相談が急に増えました。
いったいどうしてなのでしょう?

■抗体価の数字をよく見てみよう。

実際にその方たちの数値(血清ピロリ菌抗体価)を見せてもらいました。

・Aさんは、昨年が4で(-)。今年は4.9で(+)。
・Bさんは、昨年が8で(-)。今年は6.5なのに(+)です。
・Cさんは、昨年が5で(-)。今年は5.0で同じ数値なのに(+)でした。

「正常値」の項目を見てみましょう。

昨年は正常値が10未満、今年は正常値が3未満になっていますね。
実は、ここが大きなポイントになっているわけです。

■2017年から、ピロリ菌の「正常値」は大きく変わった。

これはピロリ菌に関する研究が進んだ「成果」です。

ピロリ菌は小児期に水や食べ物から感染し、胃炎や胃潰瘍、胃がんを作り出すのだとされています。
感染力が強いため、ずっと胃内にとどまって、自然に治ることはほとんどないとされてきたのです。
しかし近年、多くの方へのピロリ菌の検査や治療成績から、新たな結果が得られるようになりました。

図1をご覧ください。

抗体価が3未満の時は、ほとんどが「未感染」か「過去感染」です。つまり現在、胃の中にピロリ菌はいません。
抗体価が10以上では、94.5%の方が「現感染」。だから「除菌治療」の対象になるのです。

しかし「3以上10未満」はどうでしょう。

「過去感染」が8割近く。でも「現感染」が1割近いのです。
これでは、安心して「ピロリ菌はいない」と言えません。
だから「抗体価3以上は(+)にして、さらに詳しく調べる」という判定になったのです。

これは2017年から実施されています。
図2は「従来」の基準と「改定後」の変化を示したものです。

これで「今年の健診で、突然『ピロリ菌陽性』と言われた」理由がわかったと思います。

■いったいどうすればいいの?

では新しい基準にそって、どのような対応をすればよいでしょう。
抗体価の数値別にご説明します。

(1)抗体価が10以上の場合:

「現感染」の可能性が高いので、これまで通り、「内視鏡」を受けて「慢性胃炎」があれば治療を受けましょう。
「本当にいるかどうか心配」という方は、別の検査、「尿素呼気試験」などで確認するとよいでしょう。

(2)抗体価が3から9.9までの方:

「過去の感染」の可能性が高いのですが、ピロリ菌がまだいる可能性も捨てきれません。
まずは他の方法、「尿素呼気試験」などで確認しましょう。
ピロリ菌がいるという判定が出れば、内視鏡~治療を受けます。

二番目の方法でも陰性であれば、様子見(経過観察)でよく、心配なら内視鏡で「胃炎」がひどくないか調べると安心です。

(3)抗体価が3未満の場合:

まず、ピロリ菌はいないと考えてよいでしょう。
胃がんのリスクはかなり低い状態です。
それでも、バリウムの検査や内視鏡を一度は受けておいてください。
ピロリ菌のいない胃から胃がんが見つかるケースもあるからです。

■ピロリ菌の「自然除菌」は意外と多い?

図1を見ると、これまで考えられてきた以上に、「過去感染」が多いことに気がつきます。
つまり「知らないうちにピロリ菌がいなくなった」という人は、意外に多いことがわかってきたのです。
おそらく、風邪などで抗生剤を飲んだ結果であったり、自分の免疫力で自然に除菌を行ってきた結果なのでしょう。

これまで、ABC検診でピロリ菌(-)かつペプシノゲン法(+)の場合は、「D判定」とされ、「ピロリ菌がいないのに胃炎が強い」つまり
⇒「ピロリ菌が住めないほど胃炎がひどくなった状態」
だと言われてきました。確かに胃がんの発生も多い状態です。

しかし、同じパターンでも「ピロリ菌を自然に除菌して、軽い胃炎が残っている状態」なのかもしれません。
「D判定」だからと深刻に落ち込まずに、もう少しよく調べてみると、案外大丈夫なのかもしれませんね。

■「前にピロリ菌陰性と言われた」は要注意!!

むしろ注意してほしいのは、「前に『ピロリ菌はいない』と言われた」という方たちです。
きちんと抗体価を測っていれば、それをもう一度見直してください。上記の(1)~(3)をみて判定するとよいでしょう。

もし、(+)/(-)しか結果判定が出ていないときは再検査を受けて、抗体価をきちんと測りなおすべきです。
「ピロリ菌がいないと言われていたのに胃がんになった」という方を数人知っています。実はピロリ菌がいたのに、身体の反応が鈍くて抗体価が低く出ていただけかも……。

とはいえ、あまり心配しすぎることはありません。
60歳台より上の世代は、8割~9割の人がピロリ菌(+)でした。
でも、そのうち胃がんになったのはごく一部だけなのです。

だから、心配になったらすぐ専門家に相談する。
そういう「癖」を身につけておくと安心ですね。

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