「検査しろ」の重み

kensa時の経つのは速いもので、俳優で脚本家の今井雅之さんが
大腸がんで亡くなってから、もう2ヶ月あまりになります。

映画にもなった『THE WINDS OF GOD』は好きな作品ですし、
彼の生まれ故郷が、私の隣町ということもあり、
以前から親しみを感じていた俳優さんでした。
それだけに、54歳での死去は残念というほかありません。

お別れの会で、SMAPの中居正広さんが号泣していた姿が
ニュースで伝えられていました。
中居さん自身、のどの良性腫瘍が発見されるきっかけとして、
今井雅之さんから「検査しろ」とのメッセージをもらった
ことがあったからだと報じられています。

「検査しろ」…

今井さんの大腸がんは、2014年の暮れに発見された時点で
すでにステージ4の末期がんだったといわれています。

それだけに、彼の発したこのメッセージには、
人生と舞台とを中途で断念せざるを得なかった彼の
無念さと切実さが強く感じられてなりません。

「自分のように、無念な思いを絶対にしてほしくない」

彼のその思いを活かすためにも、必要な検査を受けてほしい。
私も大腸がんの診断・治療にあたる者の一人として、
あらためて、その思いを強くしています。

大腸がんの検査について、もう一度書かせてください。

(1)「便潜血反応」はあくまで「スクリーニング」の検査です。

大腸がんを「診断」するものではありません。

簡単な検査で、「大腸がんのリスクの高い人」を検出する。
それが「便潜血反応」の良さであり、限界でもあります。

大腸がんがあっても、2回とも(-)になる可能性があります。
逆に、(+)であっても、実際にがんが見つかるのは1%前後です。

でも、まずは定期的に検診を受けてみる。この姿勢は大切です。

(2)大腸がんの検査は「内視鏡」が基本です。

大腸がんの検査法としては、バリウムを用いた注腸レントゲンや、
PET-CT、最近実用化の進んだカプセル内視鏡や、CTコロノグラフィー
など、様々な方法があります。

でも、一番確実で信頼できる検査方法と言えば、大腸内視鏡です。daityoiu_c
怪しい部分があれば、生検で細胞を取って調べることもできるし、
小さな腫瘍なら、そのまま切除することもできます。

日本は内視鏡による診断、治療では世界のトップに立つ国。
がん年齢の50歳以上なら、一度は検査を受けておきたいですね。

(3)検査の善し悪しは「下剤」の飲み方で決まります。

大腸内視鏡検査がうまくいくかどうか。
それは「下剤の飲み方」で決まります。

日本に「経口洗腸液」という下剤が導入されたのは1980年代半ば。
私も「ニフレック」というお薬が入った頃からのおつきあいです。

体に吸収されない等浸透圧の下剤を2リットル、2時間くらいで
飲んでいただくと、4-5時間で便が透明な黄色い水に変わります。
大腸の中がきれいになっていれば、小さな病変も見落としません。

味はスポーツドリンクの薄いようなもので、少し油こい感じ。
私も時々検査で飲みます。スイスイ飲めるときもあれば、
半分くらいでちょっとうんざりしてくることもあります。。

この「ハードル」を越えるためにも、「検査しろ」は重要!
今井さんの「思い」を無にしないためにも、という思いで、
がんばって飲めれば、検査もスムースに終えることができます。

当院では、軽い麻酔で、眠っているうちに終わる方が大部分。
「とても楽に検査を受けられました」という感想を聞くと、
こちらもうれしくなってしまいます。

大腸がんは日本でも急速に増えている病気の一つです。
「検査しろ」という、今井さんの痛切なメッセージを胸に、
これからもぜひ、健康に気をつけて日々をお過ごしください。