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ピロリ菌と胃がん | 消化器内科の新橋内視鏡クリニック(虎ノ門・霞が関・内幸町)

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「ピロリ菌」と「胃がん」のご相談コーナー

会社の健康診断やがん検診で、「ピロリ菌」の検査が行われることが多くなりました。ネットやテレビのニュースでも「ピロリ菌」と「胃がん」が話題になることが増えています。
なぜ今、「ピロリ菌」と「胃がん」が注目されているのでしょう?
特に胃痛や胸やけなどの「自覚症状」がなくても、ピロリ菌の検査や治療を受けたほうがよいのでしょうか?

このコーナーでは、ピロリ菌と胃がんをめぐるさまざまな疑問についてお答えしていきます。

Q1.そもそも「ピロリ菌」って何?

「ピロリ菌」(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の中に住みついている細菌です。
「ヘリコ」は「ヘリコプター」と同じ語源で「らせん」の意味。数本の長い鞭のような毛を回しながら運動するところからきています。「バクター」は「バクテリア」。「ピロリ」は、胃と十二指腸との境目である幽門(ラテン語で「ピロルス」)に生息するという意味からの命名です。

胃の中は強い胃酸がいつも分泌されている環境。細菌といえども生存できないと思われていました。たまたま細菌が見つかっても、それは潰瘍などで酸が減った結果と思われていたのです。
しかし1982年、ワレンとマーシャルという二人の医師がピロリ菌の培養に成功しました。この菌は、強い胃酸の中でも平気で暮していける細菌だということを証明したのです。

彼らはのちに、この発見でノーベル賞を受賞しています。

Q2.ピロリ菌は「胃がん」の原因になるの?

ピロリ菌が慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になることは、早い時期から知られていました。ピロリ菌の作り出すアンモニアや活性酸素が粘膜を傷つけ、そこが深く掘れると潰瘍になるのです。さらに胃がんの原因になるのではないか?という仮説も早くから出されていました。しかし、発がん性の確認には時間がかかるため、それが証明されたのは比較的最近のことです。

今では、ピロリ菌と慢性胃炎の進行が「胃がん」の発生の大きな原因であると、一般的にも広く認識されるようになりました。ピロリ菌を除菌することで、胃がんにかかるリスクはぐんと減ります。
早めにピロリ菌のチェックを行い、治療を開始することが、胃がんから身を守る上でとても大切だということがわかってきたのです。

Q3.ピロリ菌はどこから感染する?

ピロリ菌は上下水道の完備していなかった、戦後生まれの世代に多く見られます。母親の口の中にいるピロリ菌が、食べ物の「口うつし」で赤ちゃんに感染するという報告も見られます。

ピロリ菌は5歳以上になるとほとんど感染が成立しないため、上下水道の完備した現在では、乳幼児の感染率はとても低くなりました。このままいくと「胃がん検診」はそのうち必要なくなると言われています。ピロリ菌の感染率が若い世代で大きく減っているからです。

ただし当面の間は、自分がピロリ菌に感染していないか、一度は調べておく必要があります。

Q4.ピロリ菌はどのようにして調べる?

ピロリ菌に感染しているかどうか、調べる方法はいくつかあります。

  1. 内視鏡を用いる方法:
    1. 内視鏡で「細胞」を取って、そこに菌がいるかどうか調べます。
    2. 内視鏡で取った組織を「培養」に出して調べます。
    3. ピロリ菌が出すウレアーゼという酵素を調べる「迅速法」。
  2. 内視鏡を用いない方法:
    1. 「血液検査」で、ピロリ菌抗体(IgG)を調べます。
    2. 息を吐いたときの「呼気」に含まれる尿素で判定します。
    3. 「便」の中に含まれるピロリ菌抗原を調べます。

Q5.ピロリ菌の「検査」はどれがお勧め?

各種の検査の中でどの検査がよいかは、ご自身の状況や施設の機器などによって違います。
当院では、以下のような検査をお勧めしています。

  1. ピロリ菌がいるかどうか、はじめての検査には「血液検査」がお勧め。
  2. ピロリ菌がいる場合、治療には「内視鏡で胃炎を証明」することが必要です。ピロリ菌が陽性なら「内視鏡検査」で「胃炎」を確認し、細胞をとって確定診断を行います。
  3. ピロリ菌の治療(除菌)を行ったあとは、「尿素呼気試験」で、治療効果を判定します。

上記の検査をお勧めする理由は、次のようなものです。

  1. ピロリ菌感染の証明には、簡単で確実な方法を選びます。すぐに検査できて、心理的な抵抗が少なく、判定が確実、という点から、はじめての方には血液検査をお勧めしています。
  2. 内視鏡検査は、除菌治療のためにどうしても必要です。
    感染している方のほとんどに「慢性胃炎」の所見が認められます。細胞を取って調べると、診断がより確実になります。
  3. 除菌治療を行ったあとも、しばらくは検査の値が高いことがあります。
    血液検査では、半年から1年くらいは値が高く、数年間続くこともあります。内視鏡では、数の減ったピロリ菌を捕らえそこなうことがあります。
    当院では治療の1−2ヶ月後に、尿素呼気試験で効果判定を行っています。

Q6.ピロリ菌の「治療」はどうするの?

ピロリ菌の除菌治療は、以下のような手順で行います。

  1. 胃酸を抑える薬+抗生物質×2種類を、1日2回、6錠ずつ7日間飲みます(1次除菌)。
  2. 1-2ヶ月後に効果判定を行い、陰性になれば治療は終了。陽性なら次に進みます。
  3. 抗生物質の1種類を変更します。1日2回×7日間薬を飲みます(2次除菌)。
  4. もう一度、効果判定を行います。1次+2次除菌で、95%以上の方が治ります。

では、それでもダメだったら?
 
保険診療はここまでしか認められていません。
効果判定がまだ早すぎる可能性もありますので、時間をあけてもう一度効果判定を行うことがあります。
また別の抗生物質を用いて3次除菌を行うことがあります。


Q7.胃がんの「ABC検診」って何でしょう?

最近、胃がんのリスクを判定する方法として、「ABC検診」が注目されています。
これは血液検査で、
 (1)ピロリ菌の有無
 (2)ペプシノゲン法による「慢性胃炎」の程度
の二つの項目を測定し、それを組み合わせて「胃がん発生の危険度」を判定する方法です。2007年の厚生労働省研究班により、この方法の有効性が証明されています。

「ABC検診」は(1)と(2)の組み合わせで、次の4つのレベルに分類されます。

  • A群:ピロリ菌(-)、ペプシノゲン法(-):胃がんのリスクは低い。
  • B群:ピロリ菌(+)、ペプシノゲン法(-):リスクは中等度。
  • C群:ピロリ菌(+)、ペプシノゲン法(+):胃がんのリスクが高い。
  • D群:ピロリ菌(-)、ペプシノゲン法(+):胃がんのリスクが高い。

A群はピロリ菌の感染もなく、胃炎の程度も軽いため、胃がんになるリスクは低いと考えられています。B群⇒C群⇒D群と進むにつれて、胃の「荒れ方」がひどくなり、D群は胃炎がひどくてピロリ菌も住めなくなった状態ではないかと推定されています。

したがって「B群」以上の方は、きちんとピロリ菌の「除菌」を行い、さらに「内視鏡検査」を受けた方がよいと考えられているのです。
もし会社の検診で「B」「C」「D」と判定された場合は、ぜひ外来でご相談ください。ご自身のリスクに応じて、必要な対応をお勧めいたします。


Q8.「ABC検診」は進んで受けるべきでしょうか?

「ABC検診」は、血液だけで「胃がんのリスク」が簡単にわかる方法です。

現在広く行われている「胃がん検診」は、レントゲンの検査ですので、バリウムや発泡剤を飲む苦痛、下剤でバリウムを排出する手間、放射線を浴びるリスクなどが存在します。

それに比べて1回の採血だけですむこの方法は、簡便な上に苦痛も少ないので、地方自治体や会社の健康診断で広く用いられるようになりました。バリウムの検査は、受診率がなかなか向上しないのが悩みの種でしたが、「ABC検診」では一気に受診率が高まったのです。

ただし、これはあくまで「リスクを判定する検診」であることに注意してください。バリウムの検査は「がんを直接見つける検診」ですが、この方法はあくまで「リスク検診」です。「A」判定であっても、「胃がんにならない」ということではありません。検査でピロリ菌が見逃されることもあるし、「荒れていない胃」から出る胃がんも存在するからです。

「ABC検診」を受ける機会があれば、ぜひ受けてみてください。
「B」判定以上なら、外来を受診してご相談ください。
また「A」判定だった方も、一度は内視鏡検査などで胃がんのチェックをしておいた方が安心であることを、改めて強調しておきたいと思います。